脱出の切っ掛けについて

自分自身は特別の脱出の切っ掛けとなる出来事はない。強いて言うなら「予備校に通い始める」ということが切っ掛けになるか。


ともあれ、SUISEIさんの「自分とは全く違う境遇の誰かに会って、自分の体験枠組みを変えるということに効果がある場合もあるのではないか」という言葉にはものすごく納得するものがある。自分の自身のモノの見方だとか世界だとかそういうものを打ち壊す何かが、ひきこもり状態からの脱出の原動力になるんじゃないか。そのためには目から鱗的な体験と俯瞰したモノの見方が必要になってくるように思う。


俯瞰したモノの見方の方に関係するのだけども宮台真司というキーワードも気になった。


SUISEIさんの「はてなダイアリー利用者に100の質問」(id:SUISEI:20041226)で宮台真司の『自由な新世紀・不自由なあなた』が「ニヒリズムを抜け出すきっかけ」として上がっている。自分も宮台真司の本には回復の際にとてもお世話になった*1


宮台真司に関しては似たような事例があるので紹介しよう。ロブ@大月『リストカットシンドローム』に登場する男性のリストカッターのルポより。



リストカットシンドローム ロブ@大月『リストカットシンドローム


 タツヤくんは、その後ドラッグにハマって生死を彷埠うが、就職活動の時期に読みはじめた宮台真司の著作によって立ち直った。「就職活動はやる気が起きなかったんですが、親がうるさいので一応ははじめました。けど、そのときも鬱が酷くて活動もままならなかった。そんなときに宮台真司の本に出合って、自分がやってきたことの整理が出来て、鬱から回復したんです。彼のファンで自殺したS君という人がいますが、自分はその人の逆のパターンでよかったと思いました」
 「S君」とは、若き日の宮台真司の完全コピーを目論んだものの、結局は失敗に終わり、自殺してしまった地方の青年である。それに対して、タツヤくんは、試行錯誤の途上で、偶然に宮台真司の著作に出合ったために、依存することなく、宮台の言説を冷静な視点で見ることができたという。

−−ロブ@大月,2000『リストカットシンドロームワニブックス : 153-4


「S君」とは『この世からきれいに消えたい。―美しき少年の理由なき自殺 (朝日文庫)』に登場する青年だ。彼は宮台を読み続けることによって自殺をする。宮台真司はこのようにマイナスにも機能する。


しかしプラスに働くこともあるのではないか。宮台真司と限定せずとも俯瞰したモノの見方を提供してくれるようなものがひきこもり脱出に良い影響を与えるのではないだろうか。

*1:彼を知って社会学を始めた訳ではないけれども少なからず影響を受けて、現在、社会学の大学院に在籍(^_^;