唯一性の消失

私は唯一の存在である。


これは疑いなきことであるはずだった。しかし、唯一の存在であるはずの自分と他人と比べ見ると、自分という存在が抜きんでたものではないことに気づいてしまう。


そして他人との関係も交換可能だ。相手にとって目の前にいるのは自分でなくてもよいかもしれない。そうした疑念が拭えない。


すべてのものが流動化し均質化していく世界では自らの唯一性が消失する。


明確な自己も存在しなければ明確な敵もいない。そういう明確なものが無い状態で生き続けることは探しても見つからない「唯一な私」を探し続ける戦いになる。自分を規定してくれる何かを探す戦いだ。しかし、戦いと言っても明確な敵がいるわけでもない。それは「戦場」と呼ぶべきような戦場ではない。日常が永遠と続いていく「平坦な戦場」だ。


「平坦な戦場で僕らが生き延びること」


岡崎京子の『リバーズ・エッジ』というのはそういう話だったように思う。