山田昌弘「家族役割と家族情緒の乖離」

山田昌弘,1983,「現代家族の危機的の危機的傾向 家族役割と家族情緒の乖離」『ソシオロゴス』7,東京大学大学院社会学研究科 ソシオロゴス編集委員会


パラサイトシングル、希望格差社会山田昌弘が博士後期課程の時に書いた論文。家族役割というハード(相互扶助・子育て)と家族情緒規則というソフト(愛情)との乖離について取り上げた論文。システム論臭のするソシオロゴスに掲載するために書いたからかは分からないが、山田昌弘らしくない。


内容はこんな感じ(クリップとして引用)

 以上の二方向は,FR*1とFE*2の乖離と言う前提があった。又,多くの家族社会学者は,家族の情緒集団化を予測し支持しているように思われる。第三の道の可能性がないわけではない。それは,現実の社会運動の中に見られる情緒と役割の再統合の試みである。一つは,コミューン形成運動の中に見られる。そこでは,家族を弱化させる中で,新たな情緒と役割の再統合を探っている。又,伝統型家族のFRとFEの結合を復活させようとする運動(例えば,子育ては楽しいなどと主張する)も存在する。近代家族の閉鎖性を打破しようとする家族間連帯の試み(共同保育,故意家族など)も存在する。しかし,これらの運動が有力となる状況は作られていないのが現状である。(54-5ページ)

機能的な「役割」と情緒的な規則(夫婦は愛するべき)の乖離という話。この論文を読んで、山田はこの時代からこのテーマに取り組んでいたのかと納得。

*1:家族役割

*2:家族情緒規則