アーヴィング・ゴフマン

社会科学で使われる「スティグマ」という用語はアーヴィング・ゴフマンによって広められものだ。ゴフマンの「スティグマ」は一般の言葉としての「スティグマ」とはやや異なっている。ゴフマンはスティグマを次のように定義する。

それはわれわれの注意を惹き、出会った者の顔をそむけさせ、しかもそれさえなければ彼は問題なく通常の社会的交渉で受け容れられるはずの一つの属性である


また大村によるとゴフマンの注目した点は「気配り」であるという。

スティグマの方は、もとは特異な属性をひとびとに識別させるの意である。しかも、通常はかくされていて注意深く捜さないと判別しにくいマーク。そういう含みがあるように思われる。だからこそ、ゴフマンは、正常を装う本人の努力や、常人として受容しようとする周囲の努力などを言う時、かくし通せるだろうかという当人の不安をいたく重視するのである。誰の目にも明らかと思われる肉体的欠陥についてすら、ゴフマンが関心を示すのは、当人がそれと自覚する一瞬、あるいはそれを気付かせまいとする周囲のものの気配りなどである。

−−大村英昭,1979 「スティグマとカリスマ――「異端の社会学」を考えるために」『現代社会学』現代社会学編集委員会 :117

大村英昭によればゴフマンが「スティグマ」込めた意味は2つ。

  1. 通常、スティグマは隠されていて注意深く見ないと判別できない
  2. 本人はスティグマを隠し通せるだろうかと不安に思う