知能検査のスコアと自殺率

id:hotsumaさんところにBMJ(British Medical Journal)へのリンクが貼ってあったので読んでみた。全部読んでないがきっと一番興味深いのはのこれのような気がする。

Low intelligence test scores in 18 year old men and risk of suicide: cohort study


author: D Gunnell(professor of epidemiology), P K E Magnusson(researcher), F Rasmussen(senior clinical lecturer and associate professor of epidemiology)

対象は18歳男性。調査国はスウェーデン。自殺者2811人が対象。目的は「知能検査スコア」と「自殺」の関連性について。結果は知能検査のスコアの低い人は2〜3倍自殺しやすいという結果が出たようだ。


論文では知能検査のスコアが低いと認識能力と問題解決能力が低くなり自殺に陥ってしまうのではないかという結論を出している。


詳しくないのでよく分からないが、こういう見方というのは海外の自殺研究では当たり前のことなのだろうか? いろんな意味で不適当な表現になるけども、一言で言うなら「勉強できないと自殺してしまいますよ」ということだ。こういう研究は倫理的に問題がある*1


ただ、思うのは知能検査のスコアの低い人は学校での勉強もできないから学歴がつけれなくて収入の低い仕事につかなければならない。知能検査のスコアの低い人というのは社会でも低階層に所属すると予測できるから、そういう人は自殺しやすいのかもしれない。


こういう反論が出ることを予測して、この論文では高い教育レベルの親を持つ知能検査のスコアの低い子供の自殺率も高いと書いてある。つまり、親の教育レベルが高いと家庭が裕福となり子供は貧困ではなくなる。したがって、経済的貧困から自殺が起こっている訳ではないということが言える。


自殺学一般では、貧乏と自殺には関係がないと言われている。これは自殺学・社会学の古典であるエミール・デュルケムの『自殺論 (中公文庫)』でも書かれていることだ。貧困によって自殺は増大しない。


認識能力と問題解決能力が低いと自殺するというのは確かにそうかもしれない。問題を「ひきこもり」に置き換えても、認識能力と問題解決能力が高ければ「ひきこもり」にはなりにくいということは容易に想像できる。ただ他にも色々影響を与えているものがあるのではないか?とも思える。それにIQ検査のような知能検査のスコアと認識能力と問題解決能力を結びつけることにも疑問はある。


この研究で使用されているデータは徴兵の際にとられているもののようだ。知能検査のスコアデータもその際にとられたデータ。徴兵制のない日本ではこんな調査はきっと無理だろう。ということは日本での反証は不可能ということだ。上に上げたいくつかの疑問点を解決するには海外での論文を探してくるしかないみたいだ。

*1:ただそうは言っても、関連があるなら対策を打たないといけない。倫理的に問題があったとしても研究する必要はある